No.96 西の風新聞目次
悠 々
平成21年6月19日付
 例年より数日遅れて梅雨入りとなった今年だが、あきる野あたりでは栗の木にたくさんの白い花がぶらさがりこの地特有の季節感をただよわせいている。私は今、解禁となった秋川で友が釣り上げた初物の鮎の塩焼きを前に置き、我が家の縁側から緑濃いあたりの様子をぼんやりと眺めている。

 開高健は「悠々と急げ」ということばを好んで使ったそうだが、私は70の坂を越えた現在、「悠々閑々」の境地にある種の憧れを抱いている。「閑々」ばかりでは満足できない性質なので開高のいう「急げ」を「(歳相応に)迅速に事を成せ」と理解して、健康である限り気の合った仲間たちと仲間作りをしながら気概に満ちた日々を悠々と送りたいと思っている。
平成19年4月27日付本欄に「元気だしていこう!仲間たち」のタイトルで拙文を掲載したところ、(「仲間たち」とは高齢者を指したのであるが)多くの方々から共感をいただき恐縮している。

 サムエル・ウルマンという詩人が書いた「青春」の一節を紹介したのであるが、下手な解説を加えることはやめにしてその文章を再掲してみることにする。
『青春
青春とは人生の或る期間をいうのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春というのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いがくる。以下略』
真の青春とは、若き肉体にあるのではなく、若き精神の中にこそあると詩中で説いたサムエルのことばは私たち高齢の者にとって格好の応援歌だという意味を込めて紹介したのであった。
掲載から2年を経た現在、私もいよいよ人生最終章を迎えたと実感する歳となった。今、サムエルの言葉に勇気を得て取り組みたいことがある。それは自宅を開放して私設公民館をつくるということである。財力、地位に関係なく仲間たち(原則60歳以上)とわいわいがやがややりながら生きがいづくりのための小さなお手伝いができればと考えている。もちろんボランティア活動としてである。

名づけて 学びのコミュニティ 悠々徒然塾
ああ、「悠々急げ」なのか「悠々閑々」なのか。
協力者の出現を楽しみにしている。

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