No.91 西の風新聞目次

「活字文化振興」を考える
平成21年2月20日付

 来年、2010年は「国民読書年」だそうだ。(昨年6月6日衆参両院で国会決議採択)決議文の骨子は以下の通りである。
 “文字・活字は人類が生み出した文明の根源をなす崇高な資産であり、これを受け継ぎ、発展させて心豊かな国民生活と活力あふれる社会の実現に資することは、われわれの責務である。(中略)近年、年齢や性別、職業等を越えて活字離れ、読書離れが進み、読解力や言語力の衰退が我が国の精神文明の変質と社会の劣化を誘引する大きな要因の一つとなりつつあることは否定できない。(以下略)”
 国はこの決議にいたるまで法的面においてさまざまな整備を講じてきている。
「子どもの読書年に関する決議」(1999年両院採択)、「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001年立法)、「文字・活字文化振興法」(2005年制定)
単なるパフォーマンスに終ることのないよう「国民読書年」を機に学校教育はもちろんのこと市民活動の協力を得た行政の音頭とりに期待したい。
 難しい国政運営の駆け引きに疲れたことが原因なのか首相の度重なる漢字の読み違い、財務相の約20分間の財政演説中での26カ所にもおよぶ読み違えなど日本をリードするえらい人達の読解力や言語力はこんなものなのかと世間をびっくりさせる事件?が続いたかと思えば、今度は、漢字能力検定、いわゆる「漢検」を実施している財団法人日本漢字能力検定協会が、小中学生など対象の検定料収入で公益法人には認められていない巨額の利益を上げ、その利益金で豪邸を購入したなどの理由で指導官庁文部科学省の立ち入り調査が行われたという。学校で一生懸命、純粋に勉強しているこどもたちにはおよそ知らせたくないような大人たちの世界のありさまだ。
 去る1月末土曜日の午後、銀座フェニックスプラザで行われた財団法人文字・活字文化推進機構主催によるシンポジウム(「活字文化の振興における教科書の役割」)に参加する機会があった。あいにくの荒天にもかかわらず満員の盛況であった。
 直木賞作家阿刀田 高氏の基調講演「私の教科書ものがたり」に続き、トークセツションがあり、教育関係大学の学者に教科書づくり会社社長、マスコミの教育分野解説者も加わり、世界中どこに出しても恥ずかしくない教科書をつくるための知恵を出し合い賑やかな議論が展開された。文字・活字文化振興のため大きな役割を担うべき教科書について大人たちの真剣な議論に接し安堵した次第である。
 
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