No.73 西の風新聞目次
鮭と人との関わり
平成19年12月14日付

 先日、台東区上野で開かれた「三面川(みおもてがわ)の鮭を食べる会」に参加した。
 三面川とは新潟県と山形県との県境に位置する朝日連峰に源流を発し新潟県北の城下町村上市街地を流れ日本海に注ぐ全長42キロメートル余り、マラソンコースの距離とほぼ同じ位の長さの川なのであるが、鮭が大量に遡上してくることでも名をなしている。

 「食べる会」は首都圏に在住する村上地方出身者で構成する郷友会(創立明治12年)が主催して毎年12月に行うことにしているが、現地から獲りたての鮭と名酒を取り寄せ、多くの仲間が集い鮭料理を中心にして楽しんでいる。地元の人間はこれを語呂合わせよろしく「サケ(鮭)さけ(酒)なさけ(人情)」の集いなどといっている。

 その日の朝新幹線に乗って駆けつけた市の収入役の情報によると三面川の今年の鮭漁獲量は11月20日現在6千匹、河口付近の岩船港あたりの海では2万3千匹だそうだ。今のところ昨年よりやや落ち込んでいるようだが本紙が発行される頃には街中が鮭の漁獲に沸いていることだろう。

 三面川の鮭を中心にこの地方には鮭と人との関わりを基にした鮭文化が受け継がれているが、何故この川に限って大量に入り込んでくるのか、河口付近から砂礫になっていて鮭にとって絶好の生息・産卵の場になっていることもあるが、財政的に逼迫した旧村上藩が財源確保のため保護増殖に力をいれたことが大きなウエートを占めている。加えて鮭の回帰性に着目し本流を三筋に分け一本は本流、二本は分流として分流の上下流には柵を設けそこに鮭を導き入れ産卵させ、産卵を終えた鮭は捕獲して食用とし、稚魚は育て春に本流に返してやる方法、鮭の自然ふ化増殖法を考案したことが大きい。現在でも育てた大量の稚魚を再びこの川に帰ってくることを楽しみに市内小学校の児童達も多数参加して市を挙げて毎年放流している。

 私たちの郷土あきる野にもその昔鮭が遡上していたことを本欄で紹介したことがある。(2005年10月28日付)市立前田小学校の付近にある前田耕地遺跡からサケ科の顎歯(シロサケの可能性が高いという)が7千点も出土したというのである。干物や燻製にしていたことも推測されたという。(読売新聞平成9年4月19日付)いにしえの人々も秋川あたりで捕獲した鮭を中心に家族や仲間達との団らんを楽しんだにちがいない。(筆者は東京村上市郷友会会長)

参考図書
・鮭の子ものがたり(村上城跡保存育英会1500円)
・三面川の鮭(朝日新聞社1600円)
・河川文化 河川文化を語る講演集その十四(日本河川協会)他 

 index        西の風目次 
2002・8・9~ Produce byIchiro Akami