No.7 西の風新聞目次
校長先生
2003年12月20日付

 こどもの教育に小学校の先生が果たす役割の重要性を信ずる思いからこれまで3回にわたり私が小学生時代に出会った思い出の先生を紹介してきたが、しめくくりに校長先生に登場していただく。

 今回紹介する校長先生は、私が卒業した新潟・村上小学校 (昭和25年3月)の松田直司先生である。松田先生から直接指導いただいたことはなかったのであるが、卒業式当日、式終了後私は校長室を訪ねた。松田先生から記念のサインをもらうためであった。
 今にして思えば、10歳を少し過ぎたばかりの小学生が、恐れ多かったであろう校長室へ飛び込んでサインをおねだりしたとは、一体私はどんな小学生だったのかとはずかしい気持ち半分でいるのであるが、校長先生から小さな紙切れに毛筆で書かれたサインをいただいた。

「健と美とそして聡明と一九五〇・三松田直司」と書いてあった。
 はじめはなんのことか正確な理解がてきず、ただそのまましまっておいたのであるが、中学3年、県立村上高校受験を目指した年、ふとその紙切れを見直した時からこのサインがとても気に入ることになり、半世紀過ぎた現在でも宝物として額に入れ私の部屋に飾っておくことにしている。

 校長先生は長い人生を有意義に送るために大切なこととして 「健」「美」「聡明」の3つの言葉を提示してくれたのであるが、私は今日まで次のように理解して座右の銘とさせていただいている。
 すなわち、「健と美」とは 「健康な体と美しい心の持ち主であれ」 「聡明」とは「感性豊かな賢い人であれ」と。いずれも現在でも通ずる提言であり、松田先生の洞察力に心から敬服している。

 校長先生の学校内部での役割は、大別して2つある。1つは、多くの教員を率いる職場集団のリーダーとしての役割、もう1つは、一人の教育者としての役割である。この2つをもって「校長は学校の経営者」と位置づけられ、「校長が変われば学校が変わる」などと言われ、日夜身を削る思いで奮闘している。

 「学校が変わる」とはややもすると前者の役割の成否に焦点を向けがちなのであるが、私はむしろ後者、教育者としての校長の役割に関心を持っている。
 松田先生が職場でどんなリーダーだったのか 私はわからない。言えることは私の人生に大きな指針を与えてくれた教育者であったということである。
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