No.67 西の風新聞目次
規範意識
平成19年7月6日付

 国が最重要施策と掲げる教育再生の具体策としての教育改革関連三法が6月20日国会で成立した。
その一つに改正学校教育法がある。内容は、先に改正した教育基本法を踏まえ、義務教育の目標に「規範意識」「公共の精神」の育成などを規定したものである。

 「規範」とは「てほん・模範、判断または行為などの拠るべき基準」(広辞苑)のことで、義務教育の段階から学校で徹底して教え込もうと今回学校教育法にあえて規定したという。

 私たちが生活する西多摩地方の各自治体教育委員会にはそれぞれ独自の教育目標が定められていて、実は殆どの自治体の目標に「思いやりと規範意識のある人間の育成」が伝統的に掲げられ、今回の法改正以前から教育委員会、学校が一体となって取り組んできている。教育目標は毎年改定され、自治体広報、ホームページなどで詳しく公表されている。

6月26日付読売新聞朝刊編集手帳に次のようなことが書かれていた。
―「家」という字のうかんむりは住居を、下の「豕」は「豚」を意味する。(中略) 漢字とは面白いものでうかんむりの下に置く動物が牛だと「牢」になってしまう。家と牢では天と地のひらきがある。
豚と牛はともに食卓には縁の深い家畜だが、ごっちゃにするものではないらしい。(以下略)―

 北海道の食肉製造加工会社が牛肉ミンチに豚肉を混ぜていた牛肉偽装工作事件にかかわっての記述である。家庭の食卓で牛・豚肉を混ぜ合わせて料理することはより美味なものとなり何等問題はないのであるが、製造販売業者が豚肉を牛肉と見せかけて売りつけるとは、金儲けに目がくらんだ商いの道の規範意識などおよそ微塵も見られない人間(経営者)として社会の批判を浴びている。
農水省は子どもたちが大好きなコロッケやハンバーグなど、牛ひき肉を使った加工品食品の緊急調査をはじめたという。いわゆる牛肉と表示された商品表示の真偽を確認するためだ。当該食品業界の構造的な問題に発展しなければと祈っている。

 教育委員会や学校で「規範意識」の育成に努力をしているにもかかわらず一般社会における低落ぶりの激しさは目に余るものがある。子どもは大人たちの行為を見、真似をして育つものなのだ。心の美しい日本人の再生を望んでいるのは私だけだろうか。
「実行の伴わない限り、いかなる名論卓説も画いた餅にひとしい」(森 信三先生一日一語)

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