No.58 西の風新聞目次
品 格
平成18年12月15日付

 散歩がてら立寄ったあきる野とうきゅうの書店で「国家の品格」という本(藤原正彦著 新潮社680円)を購入した。今年度新書№1の売れ筋で、日本人に「品格」を問い、売り上げ220万部突破の話題作である。値段も手ごろなこともあるが、これだけ読まれるということは、裏を返せば、昨今の日本国の品格の下落振りに何等かの危機感を持っている国民の多いことの証明にもなっているのではないだろうか。

 親の子殺し、子の親殺し、陰惨ないじめ、子どもの自殺、自治体の裏金問題、芋づる式に摘発される官製談合、果てはコンビニのATMに紐をかけRV車で引きずり強奪する等々一種の社会崩壊現象とも思われる事件の多発。これはもはや社会システムの問題というより、人間(日本人)そのものの問題として考えなければならない状況になっているのではないか。まさしく「国家の品格」を問われることとなっている。

 安倍首相が、21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図っていくため、教育の基本にさかのぼった改革を推進する必要があるとして設置した教育再生会議では、いじめ問題などについて「教育委員会の対応が後手後手だった」「市町村教育委員会の教育長の7割が教員出身者という偏りが問題ではないか」など教育委員会批判が相次ぎ、(11月9日付読売)伊吹文部科学相らは教育委員会制度の見直しに関して「国の関与強化」を主張したという。(11月21日付毎日) 果ては機能不全に陥った教育委員会は廃止せよとの考えも出ている。
諸悪の根源は「教育の荒廃にある」として、単なる「教育(学校・教育委員会)」たたきに終わることなく「日本の教育の将来について」含蓄ある提言がなされることを期待している。
子供たちの社会は大人の社会の反映そのものという考えもある。かわいい子供たちは親(大人)の背中を見て育つものなのだという原点を忘れずに議論してもらいたいと思っている。
と同時に「教育再生」も大切なことだが、「国家の品格の再生、人間(日本人)再生」に国をあげて取り組むことの必要性を感じているのは私だけだろうか。

 57年前、私が小学校を卒業する日、校長先生からいただいた言葉、「健と美とそして聡明と」を今私はあらためてある感慨を持って思い起こす。人間にとって大切な「美」とは「心の美・品格」なのだと。


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