No.55 西の風新聞目次
私の卒業論文
平成18年10月6日付

 灯火親しむ候、秋の夜長を読書や団欒に過ごす方も多いことだろう。来年の卒業を目指して勉学に励む大学生の中には学生生活最終章としての卒業論文の追い込みにかかっている者も多くいると聞く。

 燈火親し草稿の燈にぬくむさへ 大野 林火

私が大切な宝物の一つとしている物に「私の卒業論文」がある。半世紀近く前、二十歳そこそこの頃に書いたものであるが、今は亡き指導教授が卒業後二十年程経ったある日、何故か私に返してくれたのであった。
出来具合はさておくとして論文から青春時代自分がどのような考え方を持っていたのか、稚拙な思考と文脈を恥じながらも時々楽しみとして読み返したりしている。

論文の題名は「現代社会に於ける教育の機会均等について」とあり、以下第一章戦後日本の教育の姿 1終戦直後の様子 2アメリカ教育使節団の来日 3教育使節団の帰国以後 4教育基本法、学校教育法の制定 5戦後教育改革のまがり角 等当時大きな課題であった勤労青少年の教育の機会均等論が四百字詰め原稿用紙七十枚の中に製本されて収められている。

この論文を読んで私がはっとしたことがある。それは「アメリカ教育使節団の来日」ということである。

「アメリカ教育使節団」とは何か。それはわが国が太平洋戦争に無条件降伏後、連合国により占領された日本で連合国軍最高司令官の要請によりアメリカ合衆国から派遣された教育使節団のことで、昭和21年8月(第一次)に来日し、日本の民主制教育の制度と内容の提案がなされた。この時の報告書に基づき学制改革が実施される等(出典フリー百科事典「ウィキペディア」)、以来現代に至るまで日本の教育は実態はどうであれ、この報告書の指示した軌道の上を動き続けているといってもよいのであるという教育学者もいる。(出典村井実訳「アメリカ教育使節団報告書」講談社学術文庫)

安倍首相は「教育基本法改正案の早期成立を期す」「すべての子どもたちに高い水準の学力と規範を身につけさせる機会を保障しなければならない。公立学校を再生する。」といって、教育再生担当補佐官を特別に配置し並々ならぬ決意を示した。

我々一般国民も戦後の教育改革についての検証とともに民主日本国としての新しい改革案の方向に関心をもたなければいけないと思う今日この頃である。







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