No.51 西の風新聞目次
出拝金主義の世の中
平成18年7月7日付

 母校から商議員である私に一通の手紙が届いた。内容は、今メディアの報道等で世間を騒がせているM教授が国の研究費から架空の学生アルバイト代名目で1470万円を不正に受け取っていた問題の経緯と概要が中心となっている。

 そもそも国の研究費(科学研究費補助金)とは、わが国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた、独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする研究助成費で、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス等の主要国も国策として多額の予算を投入している。その投入額は、国防研究費の負担割合と比較されて論じられる程に位置づけられている。

 国の将来を担うべく期待された有能な研究者が、何を思ったかその目的ある金を不正操作してちょっとした自分の金儲けのため流用したということなのであるが、同じような話題として日銀総裁が例の村上ファンドに出資して世間の常識を逆なでするような運用益を得ていた事件がある。

 日本の金融政策の大元締めが公人の立場ではゼロ金利政策を推し進めながら個人の立場では、一般庶民感覚にはほど遠い恩恵に与っていたということで、倫理的責任を追及されている。

 考えてみれば、この二つのケース、それに時代の寵児といわれながら錬金術の違法性を追及された村上ファンド事件、ホリエモン事件の主役達もその根底に拝金主義の思想が見え隠れする。

 お金を儲けることに私は異論を挟むつもりはないが、前記いずれをとっても倫理感覚の欠如が共通していることが気になるのである。4人はいわゆる世に言う国立の有名大学で学んだ人間であるが、残念ながら学力は一流、倫理観は二流以下の人間としてか育てられなかったようである。

 今日のモラルの低下、無責任・利己的な風潮について政治家をはじめ世の大人達は嘆き、その責任は、すべて教育(学校教育)にあるような言葉をしばしば発する。私は短絡的思考と思っている。学校教育における指導のあり方の重要性は勿論なのであるが、人間(子供)に対する教育は学校だけで完成するものでない。世の風潮は教師の日常の努力を水泡に帰してしまう程大きな影響を子供に与えるものだ。

 進む倫理感覚欠如の時代、風潮の改革こそが大人達に課せられた責任と痛感している。


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