No.45 西の風新聞目次
葭子とみすゞ
平成18年2月24日付

 葭子(よしこ)とは三ケ島葭子(本名倉片よし)のことをいう。明治19年現在の所沢市三ケ島に生まれ、昭和2年40歳で永眠したアララギ派の歌人である。

 ある時期には与謝野晶子の指導を受けたこともあり、つい最近、埼玉県嵐山町にある国立女性教育会館で、病や貧困、家庭の問題を抱えながらも精神的な豊かさを歌に詠み六千首を超える作品を発表した葭子の生きる姿勢に注目して、女性の生き方を考える講座が開かれるなど現在でも注目の歌人である。
 実は葭子は明治41年6月から大正3年3月までの間、現在のあきる野市立小宮小学校に教員として赴任したことがある。二十歳そこそこの若さもあってか、子どもたちの人気者であったらしい。

 小宮小学校創立百周年記念誌には、葭子のことが次のように記されている。
『(葭子の)歌集を見ると「季の花」「水色の雨」などと題されたものがある。そこにあるいくつかの歌が小宮時代の作だと思われる。(略)小宮の山々を、しずかに見つめながら「秋雨に濡れつつ君が越えゆきし山に、灯一つともる夕ぐれ」など詠んだ。「君が越えゆきし山」に「水色の雨」そぼ降る美しい眺めは、いまだそのまま小宮の景観だ。』
みすゞとは金子みすゞ(本名金子テル)といって、明治36年、現在の山口県長門市仙崎に生まれ、昭和5年28歳の若さでこの世を去った童謡詩人のことである。大正末期、すぐれた作品を発表し、西条八十に「若き童謡詩人の巨星」と賞賛された。八十に「どこかふっくりした温かい情味が全体を包んでいる」と言わせた作品の一つを紹介しよう。

お魚
海の魚はかはいそう
お米は人に作られる
牛は牧場で飼はれてる
鯉もお池で麩を貰ふ。
けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたづら一つしないのに
かうして私に食べられる。
ほんとに魚はかはいそう。


 文部科学相の諮問機関、中央教育審議会の教育課程部会では「国語では、子どもが古典や名作に触れ、日本の言語文化に親しんだり、自分の考えを用紙1枚程度に表現する力を身につけさせることが不可欠」と指摘している。
 身の回りのことを題材に人生が詠み込まれている二人の作品に子どもの教育に対するキーワードの一つがある。
家庭でもお子様と一緒に自由詩・七行詩などを楽しんでは如何だろうか。


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