No.42 西の風新聞目次
異との出会い
平成17年12月9日付


 子ども達が大好きなカレーライス、これには必ずといっていいほど福神漬けがついてくる。福神漬けのないカレーライスは何か物足りない。
カレーは外国から入ってきた料理で福神漬けは日本独自の漬物だ。この全く異った環境に育ったものがいつの間にか、超高級ホテルのレストランでも町のカレー屋さんでも密接なパートナーになっている。この異なもの、一体どこで出会ったのかという面白い随筆が十年程前にあった。(平成六年四月二十二日付週刊朝日、エッセイスト綱島理友)
似たような話に日本料理の「刺身」がある。なまのままで薄く細く切った魚(広辞苑)とそこには必ずわさびがそえられている。わさびのない刺身などはおよそ味気ないものだ。産地は、片や大海原、片や山里と全く別世界のものが一体となって美味しい料理をつくりだしている。
かつて職場の若者の結婚式披露宴に招待されることがよくあったがお祝いの言葉として私は必ず次のようなことを話したものだった。
―本日のおめでたい席には、お刺身の料理がでていますが、メインの魚とともにわさびが盛り付けられています。魚は大海原の荒波にもまれて育ったもの、わさびは静かな山里の清流で育ったものです。魚だけ、或いはわさびだけでは何の味気もありません。海の幸と山の幸が一体となってはじめて日本を代表する料理となります。「縁は異なもの味なもの」とはよくいったもので、全く異なった環境で育ってきたお二人、今日から一つに結ばれ互いの持ち味を出して調和しあいながら刺身料理のような味わいのある楽しい家庭をつくっていただきたいと思います。―

 子どもの教育の場面では「異年齢教育」ということがある。昔、子ども達はグループ(異年齢集団)をつくって町中を飛び回って元気に遊ぶ姿があった。この異年齢集団こそが、子ども達にとってかけがえのない居場所でもあったり、同時に子ども同士で教え合い、学びあうという貴重な場となっていたのであるが、現在では殆ど見られなくなってしまった。
社会の急激な様変わりは子どもにも大きな影響を与え変化をもたらしている。変化に対応した異との出会いについて適確な代替策を生み出すことは大人達の責任なのだろう。




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2002・8・9〜 Produce byIchiro Akami