No.38 西の風新聞目次
子育てシステム考
2005年9月16日付


 本紙連載中の「希望の扉」の執筆者である今キヨ子さん(西秋留保育園長)は七月十五日付同コーナー(「子育て支援と3つの願い」)で次のような発言をしている。

―今「子育て支援」の声が多く様々な制度が生まれている。そのことは悪いことではないが保育現場から少し勇気を持って発言するならば経済向上面からの子育て支援が強いように感じられる。親心の耕しの子育て支援の方向へもう少し風向きが変わって欲しい。―

もう一人の執筆者である小山田勢津子さん(前あきる野市教育委員会委員長)は「教育の原点は家庭にあり」を根本理念に毎回様々な角度からそのあり方を提言している。両氏の発言の底辺にあるものは「人間的環境の中でごく当たり前の子育て教育の実践・復活」にあるのであろうと私も賛意を持って受け止めている。

東京大学教育学部教授兼同学部付属中等教育学校校長の汐見稔幸先生が読売新聞(少年事件をどう考える七月十二日付)で「従来型の子育てに限界」というテーマで興味深いことを述べている。
 要旨は大よそ次のとおり。「日本では高度経済成長期まで、子供を近隣社会や家族の中で育て、世間≠ノ出していた。世間では未知の人に出会うし、厳しい競争もある。だから丁寧な準備をして送り出してきた。農業社会で子供に手伝いをさせたり、野山の遊びで体を鍛えさせたのも世間に出る準備だった。子供は地域社会に放牧≠ウれて育ち、厩舎≠ナある家に戻ってしつけを受けた。放牧で地域の大人と接し、他人に優しくすることも覚えた。この子育てのシステムが、近代化が進む中で大きく変化した。放牧のシステムに代わる現代版の子育てシステムを作ることが急務だ。」

 システム作りの一環として私は「子育て応援総合計画」の策定を提案したい。この場合「単に子どもを預かる」の発想から「一緒に子供を育てる」へ転換する必要があるが、子育てに関して教育、労働、家族、地域社会等の分野にわたって官民一体で知恵を出し合い「子育て応援総合計画」を策定しようという機運が盛り上がることを期待している。


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2002・8・9〜 Produce byIchiro Akami