No.36 西の風新聞目次
教えることの大切さ
2005年7月22日付

 「教えなきゃ学力も下がるわよ」(毎日新聞七月六日付「悼」)と言い残して元中学校教師で国語教育研究家の大村はまさんが今年の春その生涯を閉じた。
大村さんは明治三十九年横浜に生まれ、東京女子大学卒業後長野県立諏訪高等女学校を皮切りに戦後は東京都内の中学校で教鞭をとり、新聞・雑誌の記事を元にした授業や生徒各人の実力と課題に応じたオーダーメイド式の教育方針「大村単元学習法」を確立した。(出典フリー百科事典ウィキペディア)
大村はま/刈谷剛彦・夏子著「教えることの復権」(ちくま新書二〇〇三年)におよそ次のようなことが書かれている。
「戦後の一番の失敗は、先生方が教えることをやめたことにある。教えることは押し付けることで、本人の個性を失わせると、そういう話がたくさん出た。そういうのがちょっとしゃれて聞こえた。戦後教育の大失敗だ。先生とは教える人のことだ。教え方が悪かったので詰め込みになったのかもしれない。だけど詰め込みになってしまったことがまずいだけだったのに教えることを手控えてしまって、あの頃から教師が教師とはなにをする人かというのを忘れたのではないかと思う。そして子どもの好きなこと、興味のあることをやってみましょうと、それに夢中になってしまった。実に不注意だったと思う。」

JRの電車内に都内の有名学習塾が出している広告が目につく。
「(前文略)授業中ボーとしたり、寝たりしている高校生は、中国二十九%、米国四十九%、日本七十三%です。また、授業がよくわからないという日本の子どもたちは、小学五年生三十四%、中学二年生五十六%、高校二年生六十三%です。
将来を担う子どもたちに考える楽しさを知り、自主的に考える習慣を身に付けさせるため、(塾名略)は生徒一人ひとりの学力を客観的に測定し、その子のための学習プランをつくり合格力を高めます。」 

子どもは正直だ。いい先生でよい授業なら目を輝かせて取り組みつまらないと机に俯になってしまう。(都政新報)
冒頭の「教えなきゃ」のことばには、大きな意味を含んでいる。

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