No.24 西の風新聞目次
読書と作文
2004年7月23日付

 五月中旬小学校時代の恩師の訃報が届いた。早朝、新潟・村上市まで車を走らせ告別式に参列することが出来た。何年か前、入院先の病院へお見舞いに行った時は、片道八時間は要し、一泊の行程だったのであるが、今回は高速道路(圏央道、関越道、北陸道、日本海東北道)の整備のお陰でおよそその半分の時間で、日帰りの旅であった。

 恩師の思い出の一つに読書と作文に力を注いで私たちを指導してくれたことがある。当時は敗戦直後でまともな教科書もなく、ましてや書籍類は手に入りにくい時代であった。恩師は貴重な本を持ってきては、読み聞かせてくれた。そしてその後、思ったこと何でもよいからと徹底して短文を書かされた。

地元の旧友もその思い出を弔辞で述べ、結局それが後になって大変役立ったという。私自身にも思い当たることがあるとしみじみ感じたのであった。

 一生懸命ご指導いただいた恩師に対し「書かされた」とは失礼な表現とは思っているが、正直なところ、そう表現しなければならない程、私の小中学生時代は、作文が大の苦手であった。読書もまた気が向かないことの一つであった。

 必ずしも恩師に素直に従う者ばかりでない五十数名の子ども達を受け持って、その指導にはさぞかしご苦労されたことだろうとご霊前に手を合わせ、お礼を申し上げつつ旧友との何十年振りの再会もそこそこに田植えを終えた田圃と新緑の小高い山に囲まれた町外れの古寺を後にした。

 子どもの読書活動の推進に関する法律(平成十三年十二月公布・施行)という法律がある。この制定の趣旨は、子どもの活字離れや国語力の低下、あるいは論理的思考力や表現力の低下等が指摘されている中で読書活動の重要性に着目し、子どもが自主的な読書活動を行うことが出来るよう、積極的に環境の整備を図るための国・地方公共団体等の責務を定めたことにある。

 簡単に言えば、子どもが読書好きになるような「仕掛け」を考えるよう大人たちに課した法律と考えればよいのであろう。

読書活動振興策の充実について各市町村や学校の取り組みに注視することももちろん大切だが、お父さんお母さん方も休日には出来るだけ子ども達と一緒に近くの図書館へ行く等して、読書活動の習慣化に積極的に関わりを持ってみては如何だろうか。

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