No.19 西の風新聞目次
「あそび」の大切さ
2004年3月26日付

 年明け早々救急車の世話になるような病に直面した。 幸い救急隊、病院の医師、看護師、職場の仲間達等の手厚い処置を受け、一命をとりとめることが出来、二十日足らずの入院で無事退院することが出来た。  しばらくペンをとることが出来ずご迷惑をおかけしたことをお詫びしたい。

  十九年前、胃切除手術で経験済みのことではあったのであるが、連日気の遠くなるような点滴攻勢で自分の時間を確保することは不可能に近かった。しかしある面では普段の生活ではおよそ考えられない、ゆったりとした時間を確保出来、いろいろなことを考える時間に恵まれたこともまた事実であった。

 病床で思ったことの一つに「あそび」の大切さということがある。「あそび」といってもいわゆる「遊ぶ」ことではない。「機械の部分と部分とがぴったり結合されておらず、その間にある程度動きうる余裕のあること(広辞苑)」の「あそび」である。
 我々がよく口にする言葉でいえば「ハンドルのあそび」のことといえば大方の方は理解できるだろう。

 直線あるいは曲線走行もハンドルに仕掛けられた「あそび」によって正しく安全に操作することが可能となる。仮にこの「あそび」がないとすれば、少しのハンドル操作にも車体は敏感に反応して危険な物体となってしまう。

 近頃、子ども達は「キレル」という言葉に代表されるように、出くわす事態に単純に反応して信じられないような大事件を引き起こすことが多々ある。こんな現象も「あそびのないハンドル」的人間がしでかす行為の一つなのだろうと思う。

 ところでこの「あそび」を子どもの教育の立場で考えた場合、一体どの場面で身につくような教育を施すべきなのであろうか。

 入院時、毎日新聞の投稿欄に載っていた次の記事を興味深く読んだ。

 『学校五日制になり、教育現場にゆとりがあるかというとその逆だ。授業数が減るため、受験に有利なようにカリキュラムも見直され、芸術などの科目は減らされる一方だ。受験対策は大切だが、多感な十代に勉強だけやらせておけばよいのだろうかと疑問を感じる。(要旨)』投稿者は大阪の高校女性教師で、タイトルは「芸術教科に全人的教育の役割」とあった。

 小学校・中学校教育における芸術系教科の重要性を改めて感じた次第である。
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