No.15 西の風新聞目次
基礎学力の大切さ
2003年10月10日付

 小学校五年生に円及び台形の面積を求める問題を出したら円の面積を求められなかった子が五割、台形の面積を計算出来た子は僅か三分の一であったという。円周率3・14、三角形や平行四辺形の面積の求め方を使うことを明示した上でのことである。このことは児童の基礎学力の低下を示す具体的事例としてしばしば引き合いに出されている。

 文部科学省は小学校五年生から中学校三年生までを対象に行った全国一斉の学力テストの結果を昨年十二月に公表した。透明性の高い形でデータを公表したことで評価されている。この学力テストはこの年の一月から二月に全国一斉に行われたのであるが、正式名は「教育課程実施状況調査」といい、学習指導要領が示す目標・内容が児童・生徒にどれだけ定着しているかを把握する調査である。簡単に云えば、学校で標準的な時間をかけ、当初想定した学習活動が行われた場合どの位児童・生徒達が正答するのかを調査したもので冒頭の件はその時の結果の一部を示したものである。

 公表された各教科にわたる実態を見てある学者は 「学力低下の傾向を明らかにする決定的なデータが報告された。」「学力低下の度合いが大きく衝撃的だ。」という。

 文部科学省は「おおむね良好」と結論づけているが、算数・数学、社会はすべての学年で前回よりダウンしている状況から学力低下は確実に進んでいると見るのが妥当なのであろう。

 今日私達とりわけ小中学生を持つ親達は、子ども達の基礎学力をめぐる問題に真剣に眼を向ける必要があろう。「別に円や台形の面積を計算出来なくてもいいではないか。」という声も耳にすることがあるが、果たしてそう片付けていいものだろうか。そもそも基礎学力とは一体何なのだろうか、なぜ必要なのだろうか。

 基礎学力の中身は荒っぽい言い方をすれば「読み、書き、算」に代表される。昔流に言えば「読み、書き、ソロバン」だ。「本に親しむ、新聞を読む、自らの意志を書いて表す、日常的な計算をする、一見日常生活に無用のような円や台形の面積を求める勉強を通じて物事を考え理解する」力(基礎学力)を身に付けることは、個人の幸福や自己実現にとって、さらには社会の発展にとって欠かせない大切なものなのである。
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