No.14 西の風新聞目次
確かな学力
2003年9月5日付

 平成十三年に公表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」の結果によると我が国の児童生徒の学力は国際的に見て上位にランクされているものの「宿題や自分の勉強をする時間」は参加国中最低であるという。
 現在我が国の学校教育(義務教育)では、「心の教育」の充実と「確かな学力」の向上の二点を重要ポイントとして掲げ、熱心に取り組んでいる。今回は「確かな学力」問題について話題提供することにする。

 我が国はここ三年間に四人ものノーベル賞受賞者を出しているが、中でも特筆されるのは、昨秋化学賞に輝いた田中耕一さんであろう。その偉業を報道する読売新聞(平成十四年十月十日付)の見出しに「四三歳会社員 学士・戦後生まれで初」とあった。
 日本人ではじめて受賞した湯川秀樹博士の四二歳に次ぐ若さであることはさておき、大学卒業後民間企業に就職しそこでの地道な研究結果が受賞に結びついた点に注目したい。大学院で研究者としての特別な教育を受けずに学士が化学賞を受賞するのは同賞の歴史上初とのことであるが、「六三三四(初等・中等・高等教育)制」という我が国における戦後教育の極一般的なシステムで教育を受けた者の快挙であったということに私は意義を感じている。

 文部科学省は本年度より「学力向上アクションプラン」を実施しているが、そこで「確かな学力の向上」のため次の五点を柱として掲げている。
・揺るぎない基礎・基本
・思考力、表現力、問題解決能力
・生涯にわたって学び続ける意欲
・得意分野の伸張
・旺盛な知的好奇心、探求心
そしてこの具体的実現のための行動プランが目白押しだ。

 検討中の一つに「小中一貫教育の推進」がある。六三制を維持するものの小中学校九年間で学ぶ教育課程の配分を市町村教育委員会が自由に決められる、弾力的なカリキュラムを可能にしようとするものだ。
これにより例えば子どもたちが苦手とする算数(数学)などの積み重ねが重要な教科では小中学校間での難易度の急激な変化をなくし実態に合った指導を行うことが可能となる。
 小中学生たちが「確かな学力」を確実に身に付けることが出来るよう行政、学校の知恵の出し合いが望まれる。
 index        西の風目次 
2002・8・9〜 Produce byIchiro Akami