No.11 西の風新聞目次
童謡・唱歌で育つ
2003年5月23日付

 子供の頃歌った思い出の歌を挙げよと問われたら私はすかさず「汽車」という。
  『今は山中今は浜  今は鉄橋渡るぞと
         思う間も無く  トンネルの
                闇を通って広野原 』
 作曲した大和田愛羅は明治十九年東京・牛込生まれ、祖父は越後村上藩士である。

 私の環境に酷似していることを知ったのはつい先年のことであったが、小学生の頃このことはつゆ知らず歌詞を自分の暮らしている村上に見立て今は亡き父親とともに得意になって口ずさんだ記憶が現在も鮮明に残っている。
 先日童謡詩人野口雨情生誕の地北茨城市にある記念館を訪れる機会があった。
 雨情は、明治十五年茨城・磯原村(現北茨城市)に生まれ後に早稲田大学の前身東京専門学校高等予科で坪内逍遥のもと文学を学ぶ等少年時代から文学的素養に富んでいたという。
 名作の一つに「七つの子」がある。
『烏なぜ啼くの 烏は山に 可愛七つの子があるからよ
  可愛可愛と 烏は啼くの 可愛可愛と啼くんだよ
       山の古巣へいって見て御覧  
                  丸い目をしたいい子だよ』
 雨情は、著書の中で「この歌詞中に丸い目をしたいい子だよと歌ったところに童謡の境地があると考えてください。童謡の境地はいかなる場合にも愛の世界であり、人情の世界でなくてはならないのであります。」と述べているという。(野口雨情記念館発行資料より)
 雨情には他に「十五夜お月さん」「赤い靴」「シャボン玉」「雨ふりお月さん」「青い眼の人形」等がある。いずれも私を育ててくれた思い出の曲である。
 これらの歌を私が何時どこで習ったのか記憶にないが、恐らく小学校か家庭であったのだろうと推測できる。
 ちなみに現行の学習指導要領では小学校(音楽)で、歌唱教材として扱う曲として次のものを提示している。

 「うみ」「かたつむり」「日のまる」「ひらいたひらいた」(一学年)、「かくれんぼ」「春がきた」「虫のこえ」「夕やけこやけ」(二学年 以下の学年略)
 豊な心情、豊な感性を育てるための一つとして小学生時代に学校あるいは家庭で優れた童謡・唱歌に触れさせることの大切さを改めて感じている。
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