No.109 西の風新聞目次
二冊物語
平成22年4月30日付

 イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの小説「二都物語」にあやかって(というより駄洒落的で恐縮だが)「二冊物語」と題して最近購入した書物二冊を紹介する。
 4月16日村上春樹の小説「1Q84 BOOK3」(新潮社1900円税別)が全国一斉に発売された。私も翌17日あきる野とうきゅうの書店で手に入れたが、山と積まれていたであろう特設コーナーには残り1冊しかなかった。
 かつて私が小学高学年の頃、父親に買ってもらった装丁が黄金色の部厚い、題名は忘れたが百獣の王ライオンと野生的少年の物語が書かれている本を夢中になって読んだことがあった。読み切り本と思っていたところ、ある日、続編があるらしいことを知り少年とライオンの運命の続きを何としても知りたくなりその続編を求めて一人で雪降る道を遠く街外れの駅まで歩いて汽車に乗り二時間ほどのところにあるこの地方随一の大都会まで行き、大型書店を巡り歩きまわったことがあった。結局は手に入れることが出来なかったのだが、本の代金より汽車賃、それに時間もかさんで親にあきれかえられたことがほろ苦い思い出として残っている。
 村上春樹の小説もどうやら読み進むうちにいつの間にか引き込まれ、続編の発行が気になり、発行日が決まるとその日の午前零時から立ち並び買い求める人が出るほどの魅力を持っているものらしい。  
 帯に「更に深く、森の奥へ。そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。」と書かれている。ゴールデンウィークを利用して“森の奥へ”入り込むことを楽しみにしている。
 同時に購入した本がもう一冊ある。「街っぷる東京23区」(昭文社1200円税別)だ。帯に「超軽量 驚きの軽さ!! 持ち運びラクラク(等々)」とある。
 実は私が所属する地元のあるグループで「都電荒川線(都内に現存する唯一の都電 早稲田・三ノ輪橋線区)に乗って沿線を訪ねる旅」という催しが年一回ある。今年の秋は全線区間を乗り切った後、浅草地区へ行き、伝統ある神社や趣き豊かな品物を販売している店に立ち寄ったり、建設中の東京スカイツリーの遠景を眺めることなどを予定している。
 超軽のこの本を片手に仲間等と“孤立しながら、孤独に染まることなく” 江戸風情の残る浅草界隈を散策する日を楽しみにしている。

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2002・8・9~ Produce byIchiro Akami