No.1 西の風新聞目次
子どもの教育は週7日制
2002年5月31日付

 今号から執筆者の一人としてこの欄を担当することになりました。どうぞよろしくお願いします。

書き始めとしていささか古くなって恐縮だが気になる話を三つあげる。

 まず数年前、ある新聞の投書欄に載っていた記事から一つ。電車内で発車を待っていた若い母親と男の子の話。突然男の子が「ママ、おしっこ」と叫ぶ。母親はすかさず「そこでしなさい。」とホームの隅を指す。居合わせた客(投書者)が、たまりかねてその母親に注意したら、「放っておいてください。自然のままにするのが私の教育方針ですから」と言われて唖然としたという話。

 二つ目は、平成八年秋、私が文部省海外派遣でスペイン、フランスを訪問した時のこと。フランスは花の都パリ、日本の有名デパートの現地店入口前。乳飲み子を抱え、前に小さな空缶を置き、見るからにそれとわかるような姿で座っている外国人女性のすぐ横に、入れ物こそないものの、地べたに座りこんでいる日本の若者たちがいてパリっ子が奇異な目をして眺めていたという話。

 三つ目は、昨年夏、ある平日の昼下がり、京王線明大前で出くわしたこと。明大前駅は、渋谷と吉祥寺を結ぶ井の頭線と交差する駅ということもあって比較的学生の乗り降りが多い駅なのであるが、やや混み合っている車内に背のすらっとしたかわいい大学生風の女性が目の前に乗り込んできた。電車が動き出したとたんにこの女性は、私の面前で立ったままおもむろに紙に包まれていたパンのようなものをパクつき始めた。

 常識、非常識の判断力は一つ一つ教えられて身につくことより自ら経験の中で学んでいくものなのであろう。「三つ子の魂百まで」とはよくいったもので、ある年代に意図的に教え込まなければならないことでもある。子どもの教育は学業だけに限られるものではない。人間として、生きていける総合的な力を身につけさせることそのものが大切と考える。
公立学校の週五日制完全実施が今年四月から始まった。忘れてはならないのは、子どもを教育することが五日制になったわけではないことだ。子どもの教育は今も昔も週七日制なのである。
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2002・8・9〜 Produce byIchiro Akami