http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001

   新潟動物ネットワーク  No.58

「わんにゃんカーニバルIN朱鷺メッセ」を視察して
 年に数回、テレビCMと共にド派手なチラシを目にすることがあります。そしてその後には「子犬、子猫の移動展示即売会イベント」が新潟県内のあちこちのホームセンターで行われます。

 今回は県内のホームセンター主催で、国際会議も開かれる県内最大級のコンベンションセンター「朱鷺メッセ」が会場と聞き、驚きました。私の知っている「生体展示即売」では、大音量のBGMの中、鳥かごのような小さなケージが何段も積み上げられ、中には小さな小さな子犬や子猫が入れられています。元気であれば愛想もありますが、明らかに具合が悪そうなうつろな目の子犬や、給水ボトルもないのに眩しいライトを当てられて呼吸の荒くなっている子犬、すっぱい匂いの水様便でお尻が汚れたままの子猫の哀れで悲しい姿が頭の中いっぱいに思い出され、そんな光景が「あの美しく聳え立つ朱鷺メッセの中で行われてしまうのか!」と残念に思ったからです。

 早速、朱鷺メッセ様宛に「移動生体販売イベント反対」の意向を要望書として提出しました。担当の方には、十分な時間を取っていただき「移動販売」の多くの問題点、弊害をお伝えしました。

 イベント初日、落ち込んだ気分で「わんにゃんカーニバルIN朱鷺メッセ」会場へ視察に行きました。思いがけず、会場入り口には入場者用の「消毒液」が備えられ、BGMのボリュームも随分抑えられていました。いつもの、何とも言えない匂いを覚悟していましたが、悪臭というものはほとんどありません。ケージも床ではなくテーブルの上に置かれ、チラシに記載されたほど大量の子犬、子猫たちが山済みになっているような状態でもありません。ケージには給水ボトルも付けられ、汚れたシートを取り替えている販売員もいました。心配になるほど幼い子犬・子猫もいないようでした。

 全般的に、衛生面に気を遣っていることがわかりましたが、行政指導のお陰でしょうか。ほんの少し安心して会場を見渡すと、ペット関連商品を扱う業者がサンプルを配っていたり商品を販売していたりする姿が見え、小型のキャンピングカーまで展示されていました。ステージ上では「しつけ教室」が終わったところで、TVで人気のペットと旅をするタレントが賑やかにクイズを出して盛り上がっていました。「ふれあいコーナー」で、チワワを乱暴に抱いたり振り回わしたりする子供に思わず声をかけて注意をすると、私の隣にいた人が親御さんでした。

 ご自分のペットを連れて来場されている方も多く、猫にリードを付けて引っ張っている人、怯えて歩かない子犬を引きずる人、オシッコの粗相を始末しない人に混じって、ロングリードをそのままにして携帯電話をいじる人の犬が椅子の脚にからまったまま、通る人や犬に吠えていました。

 多くの家庭動物たちは家族の一員として大切に飼われていると思いますが、その一方で飼養者の意識、モラルの低さなどからトラブルも年々増えています。愛玩動物の販売数が増加する中、狂犬病予防接種率は低下し、虐待・遺棄も後を絶ちません。気になる人たちを見ていてふと、思い出したことですが。

 もう一度、展示されているケージを見に行きました。ケージいっぱいに入っているスタンダードプードルの子犬は大型犬になります。値段は、初日のせいか宣伝ほど安価でもありません。遠く九州や関西から運ばれて来た犬・猫たちもたくさんいましたが、途中で弱ってしまった子もいたでしょう。「売約済」の赤札が貼ってあるケージもチラホラ。でもひと頃のブームほど次から次と売れている訳ではなさそうです。売れ残った子たちは、この後もケージの中だけで過ごしながら、各地のホームセンターや会場に運ばれて行く生活です。私たちが知っている子犬や子猫の姿ではなく、「商品」としてストックされたまま、この時期に必要な社会化も愛情も受けられず、幼い心は傷ついていきます。

 「そんなに吠えませんよ」「可愛いでしょう」「大丈夫ですよ」「ペット保険も一緒にどうぞ」・・・そんな言葉に「命を託す」責任を感じるでしょうか?
 売られている子犬・子猫の親の多くは、繁殖用動物として悲惨な状態の中で苦しんでいます。そうした負の連鎖を断ち切るためにも「移動生体展示販売イベント」など無くなって欲しいものです。

 今回の「わんにゃんカーニバルIN朱鷺メッセ」は、過去のイベント会場ほど不衛生ではなく、殺気立つような売り込みもありませんでした。しかし、その背後には「生態を無視した環境」「命の軽視」、そして「利益追求の貪欲な商業体制」があることには何ら変わりはありません。15年、20年という時間を共に暮らす子犬や子猫が、どんな飼い主(資格保有者)の下で、どんな親から生まれ育ったかを、自分の眼で確かめ納得して迎える慎重さと、飼いたい動物に対する知識、そして将来に渡って変化する自分の状況も考慮に入れることが大切だと思います。こうした認識を多くの人たちに理解してもらえるなら、このようなイベントを利用する人も減るでしょう。業者に対しても、動物愛護法に基づいた行政指導が厳しい視点でなされていくなら、採算が合わなくなって「儲け」もなくなり、結果として「移動展示販売」などなくなるでしょう。

 そんな日が一日でも早く訪れるようにと、自分に出来ることに思いを巡らしつつ、2時間ほどの視察を終え、ケージの隅でうずくまっている子猫に目をやりながら朱鷺メッセ会場を後にしました。

新潟動物ネットワーク/繁殖業者問題対策チーム
 片野 ヒフミ
平成20年11月1日掲載

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