2017年1月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.187



繋げるということ、繋がるということ



高橋 邦芳
(たかはし くによし)
村上市長
昭和34年9月 新潟県村上市(旧村上市)生まれ
昭和53年3月 県立村上高等学校卒業
昭和55年4月 村上市・岩船郡町村伝染病院組合採用
昭和57年4月 岩船地域広域事務組合採用
平成20年3月 市町村合併により岩船地域広域事務組合解散
平成20年4月 村上市役所採用・総務課長補佐
平成25年4月 村上市議会事務局長
平成27年5月 村上市役所退職
平成27年6月 村上市長に就任



筆 者



東京村上市郷友会「三面川の鮭を食べる会」にて



東京村上市郷友会メンバーと
(新潟県人会)



世界で初めて鮭の自然ふ化事業を行った種川

 新年あけましておめでとうございます。
 「三面川 宝の蔵よ あれを見りゃんせ 鮭の群れ」村上甚句の一節に村上の持つ鮭の歴史と文化が織り込まれていると気づいたのは、随分と大人になってからだったように記憶しています。
 子どもの頃、夏になると久保多町裏の二ノ瀬(現在の河川敷公園付近)に作られた簡易プール(三面川の川床にある砂利を寄せて作ったプール)で泳いでましたが、大水が出ると簡易プールが流れて、そのたびに簡易プールができるまでは、ちょうど三面川鮭産漁業協同組合の第3ふ化場の辺りにある“石亀”と呼んでいる三面川の中洲にある岩から飛び込んで遊んでいたことを思い出します。
 三面川の姿も随分変わりました。護岸整備も進み、少しの大水くらいでは私たちの生活に影響を与えるようなリスクも少なくなりました。
 しかし、以前から変わらないことがあります。10月も末になると、「どうだ?サケぼやはのぼってきたか?」という会話があいさつ代わりに交わされはじめ、11月も半ばになると「今年は、だいぶのぼってきてんねっか。」という会話があいさつ代わりになります。多分、先人たちもずっとこんな会話を交わしてきたのだろうとここに住んでいると自然に理解できます。ずっと以前から繋いできた村上の感覚です。
 昨年は統計を取り始めてから最も鮭の漁獲量が多かったのですが、今年は随分と少ない漁獲量でシーズンを終えようとしています。気まぐれというか、人間の力の及ばないところなのだとは思いますが、毎年800万粒を超える卵をふ化して養殖に取り組んではいながら、思うようにはいかないものです。
 村上市は今年10月「歴史的風致維持向上計画」の認定を農林水産大臣・文部科学大臣そして国土交通大臣から受けました。先人達が繋いできた伝統・文化、町並みや歴史的価値の高い建造物といった資産、そして鮭を中心とした食文化や生活をトータルで未来に伝承することを国が村上市に求めています。
 11月には、むらかみ町屋再生プロジェクト(味匠きっかわの吉川真嗣会長)が日本ユネスコ協会連盟のプロジェクト未来遺産2016に選ばれました。地域の自然や文化を100年後の子ども達に残すために活動する団体として表彰を受けました。
 今を、未来に繋ぐことを託された私たちは、三面川の鮭を生業としての産業として育み、子ども達の教育のための資源として守り続けてきた見事なまでの意志をしっかりと繋ぐ覚悟を強く意識しなければならないと感じています。
 今年の村上の鮭の漁獲量は、三面川・荒川そして大川を合計しても昨シーズンの三面川ひとつの漁獲量に届かずに終えました。なかなか思うようにはいかないものです。自然が私たちに示す啓示なのだと意識せざるを得ません。これからもしっかりと鮭を、鮭の文化を繋ぐということの意義を思慮しながら村上の鮭文化を伝承しつつ、その魅力を磨き上げていかなければなりません。
 今シーズンも、たくさんの素敵な鮭の恵みに出会うことができますように願っています。
 東京村上市郷友会の皆様にとりまして素晴らしい一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。

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リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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