http://www.murakami21.com 村上広域情報誌2001
2013年5月号
  リレー随筆 「鮭っ子物語」  No.143


お城の山の松風の…


岸 野 洋
(きしの よう)
村上小学校 昭和27年卒業
村上高校 昭和33年卒業(新制10回)
宇都宮大学農芸化学科
           昭和37年卒業
昭和37年~平成20年 味噌会社勤務
昭和55年 
 みそ製造1級技能士 ← 厚生大臣
平成15年
 東京マイスター ← 東京都知事




筆者










 「お城の山の松風のさやけき音に目を覚まし…」
この文章を目にして、「おや、これは…?」と思う方が居るかもしれません。そしてメロディが浮かんで口ずさむことが出来る方も…。
 これは村上尋常高等小学校(本町校)の校歌として作られた歌の一節です。私の頭の中では以前からこの歌のこの部分だけが、壊れたレコードのように繰り返して回っていました。でも私にはこの校歌を覚えるきっかけとなった情景も歌った記憶もないのです。
 私は昭和21年の春、村上本町国民学校の初等科に入学しました。同じ年齢の多くの子供たちと交わる初めての体験をしたこの年には、いくつかの断片的な記憶があります。教室の窓の下に種蒔きをして咲かせた、朝顔の深い青を見た夏休みの登校日。コの字型の校舎に挟まれた狭い校庭で、上級生の女子たちが「朝はどこから」のダンスを見せてくれた運動会。裁縫室で見たひな祭り。鐘の音が時限の合図だったことから「本町学校、ジャンジャン学校」と町学校の生徒にからかわれていたこと。これらの古い記憶はセピア色に変色することもなく、間近のことのように鮮明です。
 昭和22年の春に国民学校が廃止になったり、本町学校が町学校と合併したりしたので、私が本町国民学校の生徒であった時間は一年余と短いものでした。先述の校歌は、数十年前のこの短い時間のいつかどこかで、幼い脳の片隅に刷り込まれたに相違ありません。私はその一部分しか知らない校歌が前触れもなく浮かんで来るたびに、この歌の全部を知りたいといつも思っていました。
 数年前にインターネットで、幸運にも「村上尋常小学校校歌」の文字を見つけました。楽譜はなく相馬御風の詞が作曲者の大和田愛羅の経歴と一緒に出ていました。文部省唱歌「汽車」の作曲者である大和田愛羅が作曲した約150曲の中に探していた校歌があることを知りました。そしてその校歌は四番まであり、私の中で繰り返されていた「お城の山の松風のさやけき音に目を覚まし…」は二番の最初の部分であること、「目を覚まし」は間違いで「耳澄まし」
が正しい歌詞であることも知りました。お城山の石垣や風の音、眼下に広がる街並み、輝いている三面川と日本海を想い、今度は楽譜が欲しいと思いながら、積極的に探そうとしないうちに時が流れました。
 昨年の初秋、誘われて出かけた「三面川の鮎を食べる会」で、作曲者のご子息の大和田清さんにお会いして、私が校歌に抱いてきた思いを話す機会に恵まれました。それから半月が過ぎた10月の初めに、大和田さんから手紙が届き、校歌の楽譜が同封されていました。欣喜雀躍キーボードで弾いた結果は、お城山の松風も三面川の清流も連想する余裕がないお粗末な初演奏でした。一時は長い間探していた楽譜を入手することが出来て幸福感に酔っていた私でしたが、現在はなかなか上手くならない悩みを抱えながら弾いたり歌ったりしています。

村上尋常小学校校歌

リレー随筆「鮭っ子物語」は、村上市・岩船郡にゆかりのある方々にリレー式に随筆を書いていただき、ふるさと村上・岩船の発展に資する協力者の輪を広げていくことを目的としています。 (編集部)
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