吉川真嗣・美貴の二人旅  No.32


小さな旅
 富山県八尾  〜越中おわら風の盆より〜

 その名の起源を「遊芸の達人の大笑い」とも「豊年を祈る大藁」とも、また「美声で子守唄を歌った女の出身の小原村(おわらむら)」とも言われる「おわら」。
 訪れ見学した友人たちの感激ぶりはつとに聞いていたが、いやはや聞いていた以上に感激した、というより「いつまでも余韻が残った」というのが、的確な感想であろう。

 舞台は富山県八尾(やつお)。借景に山並みを配し、蔵造りや格子の家並みが連なり、しっとりと落ち着いた町である。日本の道百選の一つ「諏訪町本通り」は何かの媒体でお目にされている方も多いことであろう。石畳がゆったりとしたカーブを描く、美しくしとやかな坂道である。細く長い坂の両脇には、整った格子の町並みが展開していて、風にそよぐ風鈴の音が一層、八尾のたたずまいの落ち着きを引き立てている。

 この町には2度訪れているが、その1度目、「曳山会館」で見た「おわら」の紹介ビデオに強烈な印象を受けた。市や町が運営する会館で流れる映像というにはあまりに洗練されたものだったゆえである。すだれ越しに映る、おわら当日の浴衣への着替え。玄関先のよしずに蔦をのばして咲く朝顔。うつむき加減の編笠の中の表情。ゆるやかな調べを奏でる胡弓と三味線。蝉の声。そして深夜にまで及ぶ踊りの町流し。あまりに叙情的で美しく、どこかはかなげで、そして観覧する者の心をどこか遠くへといざなう。この町は1年がおわらを中心にまわっていると確信した。

 そして2度目。念願のおわらを実際に拝見できたのである。人、人、人の大変な観光客の数だが、踊り、奏でる当の本人たちは毅然とした態度で、観光客に見せる、媚びるという感じではない。自分たちの町の伝統を、この地に住む者にしか分からない精神で、今年も踊りおさめ、弾きおさめる。
 しなやかで優美な女踊りも良いが、また勇壮で直線のラインが力強いかかし踊りこと、男踊りもまた良い。諏訪町通りの坂が日没後の闇の中、家並みの前に連なるぼんぼりの灯りに浮かび上がる頃、まつりはクライマックスを迎える。

 立春から数えて210日の風を治め、五穀豊穣を祈ると言われる「おわら風の盆」。まつり後の町は一陣の風が吹きぬけ、胡弓と三味線の音がどこか遠くでまだこだましているような熱気が残っていたが、夏を惜しむ哀愁にも思えた。
 このまつり、毎年9月1日から3日である。
  
写真・文 吉川 真嗣・美貴


優美な女踊り


男踊り




おすすめ食事処
会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬
 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274



家並みに連なるぼんぼり



上菓子司 会津葵
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