吉川真嗣・美貴の二人旅  No.27


小さな旅 
  〜青森県  奥入瀬渓流

 10月の声を聞き、テレビニュースにも紅葉の見所と時期等が流れ出したここ数日である。秋の行楽シーズンとして気候も良く安定し、実りのイメージと重なって豊かな印象の月である。
 こんな時節に「お勧めスポットは?」とたずねられるとすれば、それこそお勧めしたい所は咄嗟に幾つも頭をよぎる。愛知県足助の香嵐渓(こうらんけい)に、大分の湯布院や秋田の角館・・・・、はたまた京都の永観堂・・・・。「な〜んだ、紅葉で有名な名の知れ渡った所ばかりではないか。」と落胆の声が聞こえそうであるが、しかし、木の葉の色づく名所として名を馳せるだけあり、本当に美しい、さすがに美しいと溜息の漏れる所ばかりである。

 私などは1年の半分は「次はどこに遊びに行こうか・・・」と考えふけり過ごしているような輩ゆえ、結構こうしてあちこちの地を思い起こし、今年のかの地の木々の具合はどうだろう、と思い巡らせるだけでもワクワクするような、「幸わせ者」である。
さて、そんないろいろに候補が挙がる中で、今月は散策して爽やかによみがえる地、青森は奥入瀬渓流(おいらせ)をご紹介したい。


 青森と東京をたったの2時間58分で結ぶという、新幹線「はやて」が開通した折、JRでさかんにPR用に使われたのが、この「奥入瀬渓流」である。私など東京に降り立つ度に清涼感溢れる急流の水しぶきとそれを取り巻く緑の木々のポスターに、どれほどうっとり眺め入ったことか知れない。しかし、この勢いある流れのポスターは、人を寄せ付けない山を深く分け入った奥に忽然と姿を現す秘境の地にも思えて、そうたやすく誰でもが訪れられる地とは思わなかった。
 「いつか訪ねられる日がくれば・・・。」と遠い日に望みを託すような気持ちで何度も何度もそのポスターを目にしていた矢先、思いがけずそのチャンスは訪れた。
 かの有名な「ねぶた」と「ねぷた」を見た帰り、ほど遠くない距離に「奥入瀬」の名を地図に発見した喜び。車を走らせながらそうこうするうち、道路標識にも「奥入瀬」の表示が出てきたのである。多分それは登山道の入口のようなもので、数時間もそこから分け入り、登り、あのポスターのような美しい光景に辿り着くのだろうと勝手に想像しつつ、せめてその入口まででもとりあえず行ってみようということになり、表示に沿って車を走らせた。
 ロッジのある入口場所に着くと、大勢の人が車道から流れのある小経に降りて、散策路を歩んでいる。と、その時!!!突如私たちの目の前にあのポスターで見慣れた光景が目に飛び込んできたのである。その地はまさに山深くでもなく、人を踏み入らせない険しい地でもなく、ごくごく平坦な山の車道に沿った、まさに脇道に自然に優しく穏やかに展開していたのであった。
 しばし、散策路に沿って、歩く、歩く、歩く。平坦なのに景観に起伏があって変化があり、それぞれに豊かな山の森の物語さながらである。少しの川底の段差と石の配置が作りなす急流の一つ一つに名前がついていて、この流れをこよなく愛した長い年月の人々の思いが感じられたことであった。
 私たちが訪れたのは8月の1度きりであるが、10月から11月にかけて北の地にいち早く訪れる木々の色づく交響曲の季節はいかほどと想像する。
 そう言えば、日本の南の端「屋久島」は光遮る程の鬱蒼とした森であったが、ここ北の端、奥入瀬は優しい光を燦燦と降り浴びる穏やかで爽やかな地である。
 秋の一日、多少健康に自信のない人も、老人も、赤ちゃん連れのファミリーでも誰でもを迎え入れ、どこからでも好きな場所から入ってゆける奥入瀬の懐に沿って散策されること一押しである。
 



 
 
写真・文 吉川 真嗣・美貴


























おすすめ食事処
会津名産
 本ぼうだら煮
 にしん山椒漬
 
福島県会津若松市相生町
 Tel 0242-22-2274




奥入瀬渓谷にて筆者



上菓子司 会津葵
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