スペイン・フランス教育事情視察 赤見市郎(58歳)

「平成8年度文部省教員海外派遣団報告書」
      ースペイン・フランスー
平成8年11月8日〜11月23日  第492団(全国市町教育長等)
研修テーマ:スペイン・フランスの教育・文化及び社会等の諸事情の視察調査
主な視察地:
 1)ヘレス・デ・ラ・フロンテラ市(スペイン)
スペイン南西部、カディス州北西部の都市。大西洋岸の平野を見おろす標高55mの丘陵に位置する。すぐ近くに地中海、ジブラルタル海峡がある。 アンダルシア地方のぶどう酒産地として有名で、特にシェリー酒は世界的名声を得ており、多くの著名な醸造元があり、街全体に豊かで落ち着いた雰囲気がある。
歴史的には、まずフェニキアの植民地として始まり、8〜13世紀にはムーア人が占領、その後、1264年に国土を回復という経過があり、市内には多くの遺跡が残っている。人口約18万の瀟洒な小都市である。
 [訪問施設]
 a アルフォンソX世 小・中学校ー幼稚園併設
 b ラ・ウニオン 小・中学校
 c ラファエル・アルペルト幼稚園
 d コロマ旧制中学校
 e 市立考古学博物館
 f  国立美術学校
 2)シャンベリー市(フランス)
フランスの東部、サボア県中西部の商工業都市。豊富な電力により りアルミニウム、機械化学、ガラス、食品等の工業が発達。また、アルプス山脈の南に位置し、風光明媚な観光地でもある。冬はスキー客で賑わい、日本からのスキーヤーも多い。かつてはサボア公国の首都であり、古城や大聖堂が残っている。人口約6万人の美 しい街である。グルノーブルも近くにある。
[訪問施設]
a ペール・ボア小学校
b コート・ルース中学校
c IUFM教員教育センター
要した経費(個人経費を除く実費):
総経費527,144円(内訳 国補助金200,000円 都・市0円  個人負担327,144円)

報告書から:
P49
フランスの教員養成に学ぶ
                     東京都あきる野市教育委員会
                        教育長  赤 見 市 郎
◇「日本では、中・高等学校でフランス語を教えていますか」「教材にフランスの小説を使っていますか。どんなものを使っていますか」「日本ではどのようにして教員養成を行っているのですか」
◇「女子高生にわいせつ行為、中学教諭36歳逮捕」「体罰繰り返し小学校教師停職処分」「男子児童に行き過ぎ性教育。32歳小学校教師懲戒免職」「ナイフで脅し体罰、林間学校で規則違反と中学校教師」

 前段は第2の公式訪問都市、シャンベリーの教員養成学校、IUFM(教員教育大学センター)等におけるフランス側の質問であり、後段は極く最近の
(わが日本)の新聞記事の見出しである。

 IUFMではフランスの教員養成制度を学んだのであるが、訪問者のわれわれ一行に真剣に質問を投げかけてきたフランスの教育関係者の姿勢と、わが国の新聞を賑わしているあまりにもふがいない教員の行動に係わる記事とを考え合わせる時、もしかするとわが国の教員養成→採用→研修制度、特に採用制度に問題があるのではという懸念が浮かび上がってくる。
 そんな私にとってIUFMでの研修は、通訳を介しての、その上短時間の研修であったので、正確な理解に欠ける心配もあるが、たいへん興味を引かれることとなった。

 ところで東京都では教員は自らの職責を自覚し、職務を適切に遂行するため、教育に関する専門的研究と人間的修養を深めることが重要として、平成6年に教員のライフステージに応じた研修体系の改善・充実を図った。特に新規採用教員に対しては、教員としての使命感を養うとともに、実践的指導力や専門的な知識を身につけ、円滑に教育活動をすすめられるよう、研修の在り方の改善・充実を図っている。

 フランスの教員養成・採用制度を簡単にいうならば、4年制大学を卒業し、教員採用試験(教員は国家公務員であるので国家試験)を受け、合格した者はIUFMのような教員養成大学に入り、教員の資格を持ち、国から給与の支給を受けながら1年間、教員としての必要な知識(自分の専門科目、児童生徒指導技術、コンピーター操作、等)を深めたり、学校での実習(担任について指導法を学んだり、1人で教えたりする)で指導技術を訓練し、最終の検定試験に合格した者が晴れて正式に教員として配属先の辞令が出るシステムとなっている。
 日本のように合格者をそのまま採用し、即クラス担任をさせながら研修するという制度はとっていない。
 いわば司法修習制度(司法試験合格→国家公務員に準じた身分→修習生として2年間勉強→卒業試験合格→法曹資格取得)と似たものとなっている。

 わが国でもかつて教員免許状の取得に関してインターン制度(資格を最終的に取得するに先だって実地訓練を課すること)に相当する制度を設けるべきだとの意見もあったようであるが、免許状の取得は現行の方法でもよいとしても、採用にあたっては、フランスの制度に学ぶことも真剣に考えてよいのではないかとつくづく考える今日この頃である。

P14  視察日誌(赤見担当箇所)
第10日目(平成8年11月17日日曜日 天候 小雨・くもり・みぞれ)
移動:バルセロナ→モンペリエ→リヨン→シャンベリー
宿泊地:シャンベリー
日程:
 7:30 ホテルアベニダ・パレス発(専用バス)
 9:45 フランスとの国境にてフランに両替
10:08 国境を越えてフランスへ
12:00 モンペリエ着  昼食
13:29 モンペリエ発(ジュネーブ行 TGV)
16:03 リヨン着
16:20 リヨン発(専用バス)
17:30 シャンベリー  ホテルメルキュール着

専用バスでフランスへ 
 マドリード(11月9日)以来、8日間のスペイン滞在も、時ならぬ豪雨に巻き込まれて、ちょっとしたアクシデント(注1)に見舞われはしたものの、予定のスケジュールを無事消化し、今日はいよいよ第2の訪問地、フランス、シャンベリーへの移動である。
当初の予定では、バルセロナ(スペイン)からモンペリエ(フランス)までは列車による移動を予定していたが、引き続く大雨でスペイン自慢の特急TARGOがダウンするという苦い経験(注1)もあって、急遽専用バスでの移動となった。
雷鳴の見送りを受け
 モーニングコール6時、荷物出し6時45分という早い動きにもかかわらず、団員の士気がすこぶる高まっているなか、専用バスは、雷鳴の見送りを受け、小雨のバルセロナを後にした。
 高速道路A7(E15)を地中海に沿って北上、およそ4時間のバスの旅となる。ちなみにA7とはスペイン国内の路線名、E15はヨーロッパ共通の路線名で、ヨーロッパ各国に通ずる路線という意味を表している。この道は、フランス、ドイツへと通じているというわけだ。
静かな国境越え
 国境前のドライブインで小休止。ここから数分もすると国境だ。ここでフランに両替。
 国境は、黄色いゲートとなっていたが、高速道路の料金所と何等変わることなく、パスポートの提示を求められることもなく、実に静かな国境越えとなった。
 フランスに入ると、刈り入れを終えたワイン専用のぶどう畑がひろがっていた。やがてフランス西部の小都市モンペリエに到着。
モンペリエから新幹線(TGV)に
 モンペリエ駅前のマグドナルドで軽い昼食をとるハンバガー、ポテトフライ、コーラで25フラン。味も形も、私にとってこれが一番日本的食事になったというのは皮肉が過ぎるか。
 13時29分、スイス、ジュネーブ行きのTGVは何の合図もなく、静かにモンペリエの駅をスタートした。列車は途中、ニーム、アビニヨン、バレンスに停車し、下車駅リヨンについたのは16時03分であった。
みぞれ模様のシャンベリー
 
駅前から専用バスで目的地シャンベリーに向かう。かつての冬のオリンピックの舞台となったグルノーブルが近く、東を眺めると真っ白に雪をかぶったアルプスの山並が見える。
 天気は依然として回復せず、シャンベリーではみぞれ模様となっていた。
 17時30分、ホテルメルキュール着。かくして10時間に及ぶ大移動は終了した。

参加者全員で作成した報告書

メンバーの記録
団長浅野鐡雄
(宮城県河南町教育長72歳)
副団長畑岡 昭
(茨城県笠間市教育長66歳)
副団長沼田典生
(兵庫県稲美町教育長67歳)
団員
赤見市郎
(東京都あきる野市教育長58歳)
原  勤
(兵庫県三原町教育長58歳)
古原忠雄
(島根県浜田市教育長66歳)
舌間清裕
(福岡県直方市教育長67歳)
赤間弘英
(宮城県教育委員会)
大槻俊雄
(茨城県教育委員会)
田中 功
(東京都教育委員会)
廣岡 徹
(兵庫県教育委員会)
井上和義
(兵庫県教育委員会)
広原啓視
(島根県教育委員会)
齊藤 晃
(福岡県教育委員会)
山崎直樹
(添乗員 内外航空サービス)
以上15名

視察国
1スペイン
2フランス

視察都市
マドリード
ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
セビリア
バルセロナ
モンペリエ
リヨン
シャンベリー
パリ














































































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2002・8・9〜